しいちゃんと私

1年間日記を書き続けるのが目標

グロテスク

土曜日。半日出勤。朝起きると夜中の3時に、しいちゃんからメッセージが来てた。

「眠れないから起きている。朝出る時にかけてきて」

ポリファーマシー 。反跳性不眠。

出勤途中に電話をかけた。

しいちゃんと6日ぶりに話した。

しいちゃんは寝入りばなだったらしく声が死にかけてた。

「せっかくだからこのまま寝る?それとも頑張って起きて昼夜のリズムを調整してく?」

と聞くと

「いい」

と言った。

何がいいのか。でもいいのならいいかとそのまま電話を切らずにいた。

しいちゃんの声はくぐもっていて半分くらい聞き取れなかった。時々咳をした。

そのうち何も喋らなくなった。

私から喋ることは何も浮かばずに、とりあえず今朝は寒いこと、外気温が零下3度のこと、昨日は零下6度だったので昨日の方が冷えたはずなのに今朝の方が寒く感じることを言った。

しいちゃんは何か答えたが聞き取れなかった。

それから黙って、私も話すことが見つからず黙った。

しいちゃんが今の恋人と初めて過ごしたお正月休みがどうだったか聞こうと思ったが、聞いても半分死んでいるしいちゃんからは多分平べったい答えしか返ってこないし、聞き取れないだろうと思い、よした。

静かなので寝たのかと思ったが、受話器の向こうから寝息は聞こえなかった。

しいちゃんは寝ているわけではなくて、ただの石になっているのだと思った。

15分ほど経ったので黙って電話を切った。

「切るね」

と言ってから切った方が良かったかなと考えたが、寝ているのなら私の声で起きてしまうのもイヤだし、それに黙って切ろうがひと声言ってから切ろうが、どっちだろうが、しいちゃんは何も思わないだろう。ただの石だから。

帰りにまたしいちゃんと電話で話した。

ジェラード屋さんの駐車場に車を停めて話した。

しいちゃんは完全に覚醒していて、滑舌も良く、言ってることは全て聞き取れた。

人の見た目について、男の高身長、女のおっぱいと顔つき、補正下着、世界で1つだけの花的な股間の形状、経年劣化で象化していく股間と永久脱毛の問題、ドライオーガズムとサウナの関係、篠田桃紅、白洲正子武田百合子の事などを話した。

そして、植物の生殖器は虫を惹きつけて生命を宿すためにあらん限りの美しさで華やかに花を咲かせるのに、人間の生殖器はどうして花のような美を持たず、悲しいくらいグロテスクなのかという話になり、人が人と深く結びつくには、人のグロテスクを受け入れるという過程が必要なんじゃないかという結論になった。私は自分のグロテスクを受容できないでずっと生きてきたので、この結論にはすごく拓かれたような気持ちになった。忘れないでいたい。

電話を切ってから、ジェラードを食べた。

ピスタチオとほうじ茶と栗きんとんのトリプル。450円。

履歴を見たら1時間25分話してた。

車のエンジンを止めていたので身体が冷え切っていた。話している時は気付かなかった。

西友に寄ったが湯豆腐に入れる白身魚が品切れで、鶏肉を代用で買った。

湯豆腐というより、ただの柚子のごった鍋になった。せん切り柚子、鶏肉、長葱、白菜、椎茸、マコモタケ、厚揚げ、豆腐、お餅。具を入れすぎて豆腐が崩れた。

おせちの残りの昆布巻き、青豆、黒豆、青梗菜と枸杞とキクラゲの中華炒め。

おばあちゃんの昆布巻きは、魚が入ってなくて昆布だけで作られていて食べやすい。醤油や砂糖もキツく無くて、ほんのりと酢が効いていて、とろりと柔らかい。

おじいちゃんとおばあちゃん2人とも眠そうにしていたので5時前に晩ご飯にした。二人とも機嫌が穏やかで、残さず食べてくれて良かった。